さきがけ社労士事務所労務ニュース2024年4月号
2024年問題」物流2法改正案が閣議決定されました
働き方改革関連法が本年4月から適用されることによる物流業界の「2024年問題」に対応するため、商慣習の見直しや効率化に向けた物流関連2法の改正案が閣議決定されました。主な内容は以下の通りです。
◆荷主・物流事業者に対する規制【流通業務総合効率化法】
・荷主・物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、当該措置について国が判断基準を策定。
・上記取組状況について、国が判断基準に基づき指導・助言、調査・公表を実施。
・上記事業者のうち、一定規模以上のものを特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取組みの実施状況が不十分の場合、勧告・命令を実施。
・さらに、特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付け。
※法律の名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律」に変更
◆トラック事業者の取引に対する規制【貨物自動車運送事業法】
・元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け。
・荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む)等について記載した書面による交付等を義務付け。
・トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付け。
◆軽トラック事業者に対する規制【貨物自動車運送事業法】
・軽トラック事業者に対し、①必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講、②国土交通大臣への事故報告を義務付け。
・国交省による公表対象に、軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報等を追加。
【国土交通省プレスリリース「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定】
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000747.html
賃上げ予定の中小企業の6割が業績改善の伴わない「防衛的」賃上げ
日本商工会議所・東京商工会議所は2月14日、「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果を発表しました。全国の中小企業6,013社を対象に調査したもので、2024年1月4日~26日に実施し、2,988社から回答を得ています。
2024年度に賃上げを予定する企業は、前年度比3.1ポイント増の61.3%に上ったものの、うち6割が業績改善を伴わない人材確保のための「防衛的な賃上げ」を迫られている状況です。
◆人手が「不足している」と回答した企業は65.6%
「人手不足の状況および対応」では、人手が「不足している」と答えた企業は前年比1.3ポイント増の65.6%に上り、3社に2社が人手不足という深刻な状況が依然続いています。
業種別にみると、「2024年問題」への対応が求められる建設業(78.9%)や運輸業(77.3%)、労働集約型の介護・看護業(76.9%)で「不足している」とする企業の割合が高く、8割近くに及んでいます。
また、最も低い製造業(57.8%)でも約6割が「不足している」と回答していて、あらゆる業種で人手不足の状況にあります。
◆2024年度に「賃上げを実施予定」の企業は6割超
こうした中で、2024年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、昨年度(58.2%)から3.1ポイント増加の61.3%と6割を超え、賃上げに取り組む企業は着実に増加しています。ただ、そのうち、「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」は60.3%で、依然6割が「防衛的賃上げ」となっています。
従業員規模別では、従業員5人以下の企業では、「賃上げ実施予定」は32.7%にとどまり、「賃上げを見送る予定(引下げ予定を含む)」が16.8%に上っています。
◆「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業は38.4%
2023年10月の最低賃金引上げを受け、「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業(直接的な影響を受けた企業)は38.4%と、昨年度から0.4ポイント低下したものの引き続き高い水準です。
一方、人手不足や物価上昇が進む中、「最低賃金を上回っていたが、賃金を引上げた」企業は29.8%と、昨年度から5.2ポイント増え、2017年の調査開始以降で最も高い割合となっています。
【日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果】
https://www.jcci.or.jp/20240214_survey_release.pdf
66歳以降も生活のために働く人が増加
~内閣府「生活設計と年金に関する世論調査」より
◆生活設計と年金に関する世論調査
内閣府は3月1日、「生活設計と年金に関する世論調査」の結果概要を公表しました。これは、今後の施策の参考とすべく、老後の生活設計について、また公的年金制度や私的年金制度への意識・ニーズについて調査したものです(全国18歳以上の男女対象、有効回収数2,833人)。前回は平成30年に実施されており、5年ぶりの調査となりました。
◆66歳以上も生活のために働く人の割合が増加
老後の生活設計について、「何歳まで仕事をしたいか(またはしたか)」という設問では、61歳~65歳が28.5%と最多で、66歳~70歳(21.5%)、51歳~60歳(14.8%)と続きます。66歳以降も働きたいという人は42.6%に上り、前回調査より5ポイント上昇しています。その理由は「生活の糧を得るため」が75.2%と最多です。老後の生活資金の不足分を働くことでまかなうという意識の高まりがうかがえます。
また、厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方についての設問では、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」(44.4%)という回答が最も多くなっています。
今回の調査からは、就労、公的年金、貯蓄を組み合わせて生活設計をするという方が多いことがわかります。人口減少が加速する中で、企業としても、働く人々のこうした意識をくみ取りながら、安心・安全に働き続けられる制度を考えていく必要があるでしょう。
0コメント