さきがけ社労士事務所労務ニュース2024年3月号
◆男女の賃金の差異の平均値
令和4年7月8日に、女性活躍推進法に基づく女性の活躍に関する情報公表項目に「男女の賃金の差異」が追加され、常用労働者301人以上の大企業に対し情報公表が義務化されたのは記憶に新しいところです。
今般、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、男女の賃金の差異の平均値(対象:301人以上事業主)が明らかにされました。
≪男性の賃金に対する女性の賃金の割合の平均値≫
・全労働者→69.5%
・正規雇用労働者→75.2%
・非正規雇用労働者→80.2%
※義務対象企業17,370社のうち、女性の活躍推進企業データベースに加え、厚生労働省が把握した14,577社の公表数値の平均値(令和6年1月19日時点)
◆求職者にとっての比較材料に
男女の賃金の差異は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」で公表されています。もちろん、差異が大きいからといって一概に差別的な取扱いをしているというものではありません。しかし、あまりに開きがある場合、特に女性の求職者が不安を覚える可能性は大いにあります。今回公表された平均値は、採用活動において重要な意味を持つことでしょう。逆にいえば、十分な取組みを行っているという企業は、適切な説明や積極的な発信をすることで、この数値を味方とすることもできそうです。そのためのはじめの一歩として、まずは自社の男女の賃金の差異を把握することが重要です。
【厚生労働省「第67回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37629.html
2024年10月からの社会保険適用拡大に関するQ&Aが公開されました
所定労働時間または所定労働日数が通常の労働者(正社員)の4分の3に満たない短時間労働者でも、①1週の所定労働時間が20時間以上であること、②所定内賃金が月額8.8万円以上であること、③学生でないこと、④特定適用事業所に使用されていること、という要件を満たせば、健康保険と厚生年金保険の被保険者になります。
今年の10月から、④の特定適用事業所の企業規模要件が、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時100人を超える企業から常時50人を超える企業に拡大されるため、厚生労働省によるQ&Aが公開されました。関係のある方は、下記をご確認ください。
◆問9 「被保険者の総数が常時50人を超える」とは、どのような状態を指すのか。どの時点で常時50人を超えると判断することになるのか。
(答)「被保険者の総数が常時50人を超える」とは、①法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上50人を超えることが見込まれる場合を指します。②個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上50人を超えることが見込まれる場合を指します。
◆問10 特定適用事業所に該当した適用事業所は、どのような手続が必要になってくるか。
(答)特定適用事業所に該当した場合は、①法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所を代表する本店又は主たる事業所から、事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出ることになります(健康保険組合が管掌する健康保険の特定適用事業所該当届については、健康保険組合へ届け出ることになります。)。②個人事業所の場合は、各適用事業所から、事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出ることになります(健康保険組合が管掌する健康保険の特定適用事業所該当届については、健康保険組合へ届け出ることになります。)。
【厚生労働省「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和6年10月施行分))】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240124T0010.pdf
ワーケーションの実態と 効果
パーソル総合研究所の「ワーケーションに関する定量調査」によると、普段の職場や自宅とは異なる日常生活圏外の場所で、仕事(テレワーク)をしながら自分の時間も過ごす「ワーケーション」や、出張先などで滞在を延長して余暇を過ごす「ブレジャー」を行ったことがある就業者は、17.4%いるそうです。
◆ワーケーションのメリット
直接的なコミュニケーションの機会が少なくなってきている昨今、グループでワーケーションを行うことで、よりワーク・エンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態)が高まったという調査結果が出ています。他のメンバーと一緒に非日常の中で仕事をしながら過ごすことで、一体感が高まり、チームワークにも良い影響を与えるようです。
◆隠れワーケーションのリスク
一方、直近半年未満にワーケーションを行った人のうち14.1%が、他のメンバーに隠れてワーケーション(隠れワーケーション)を行っている実態もわかりました。
また、ワーケーションを認めている企業(と認知されている割合)は54.8%あったそうですが、ワーケーション経験者のおよそ半数が、企業からワーケーションを認める方針が出ていないか、禁止されている中で行っていたということです。
こうした隠れワーケーションが行われると、様々なリスクが発生します。情報漏えいや労務管理上のリスクの増加、職場の人間関係の悪化、従業員に対する懲戒処分を行う際のトラブル発生などが考えられます。
ワーケーションを認める場合には、関連規定や申請書を整備することはもちろん、部署のメンバーへの伝達やセキュリティ対策、効果的な実施方法など、実際の運用面も検討することが大切でしょう。導入をご検討される際は、弊所にご相談ください。
【パーソル総合研究所 「ワーケーションに関する定量調査」】
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/workcation.html
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