さきがけ社労士事務所労務ニュース2025年6月号

学生アルバイトを雇う際に注意すべき労働条件

◆「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン

厚生労働省では、全国の大学生等を対象に、多くの新入学生がアルバイトを始めるこの時期に、自らの労働条件の確認を促すことなどを目的としたキャンペーンを実施し(4月1日~7月31日まで)、大学等での出張相談やリーフレットの配布などを行っています。そこでは、「勝手にシフトが変わっている!」「代わりにバイトする人を見つけられないとやめられない」「忙しいと休憩時間がもらえない!」など、“おかしい”と思ったら、まずは労働基準監督署等に相談することを呼びかけています。企業としても、今一度、アルバイトを雇う際の労働条件について確認しましょう。

◆書面で労働条件を示す

①労働契約の期間、②契約期間がある場合、更新の有無、更新上限、更新する場合の判断基準など、③仕事の場所、内容、変更の範囲、④始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替のローテーション、⑤バイト代の決め方、計算と支払方法、支払い日(最低賃金を下回らない)、⑥退職時・解雇時の決まり、⑦有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、無期転換申込みに関する事項・無期転換後の労働条件など。

なお、労働者が希望した場合は、メール等(印刷できるもの)による明示も可能です。

◆学業とアルバイトが両立できるようなシフトを設定する

学生の本分は学業であることを踏まえたシフト設定が必要です。また、採用時に合意したシフト変更等について、事業者が一方的に変更を命じることはできません。

◆アルバイトの労働時間も適切に把握する

労働時間の管理が必要なのはアルバイトであっても変わりません。

◆商品を強制的に購入させることや、一方的にその代金を賃金から控除することは禁止

公序良俗に反して無効となりますし、不法行為として損害賠償が認められる可能性があります。

◆遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることは禁止!

遅刻等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることはできません。また、遅刻を繰り返すなどの規律違反行為への制裁として、無制限に減給することはできません。

【厚生労働省「令和7年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施します」】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_54645.html

オンライン面接・録画面接の注意点は?

近年の生成AI技術の進化は、人事業務全般の効率化と高度化を急速に促進しています。採用面接時の動画を分析するものなどもあり、これからも生成AIの採用活動への導入が進むといわれています。

◆オンライン/録画面接の注意点

コロナ禍以降、オンライン面接(Web面接)や録画面接が広がってきていますが、注意しておきたい点があります。

① カメラ越しでは身振り手振りや微妙な表情変化・雰囲気が捕捉困難であり、評価精度が低下します。対面に比べ応募者の人柄判断が表面的になりやすくなります。

② 機材や通信環境に依存するため、接続トラブルや音声途切れ・映像フリーズが面接の質を低下させます。オンライン面接では、タイムラグが会話リズムを乱すため、面接の質を低下させます。ツール操作に不慣れな面接官/応募者による進行遅延の発生は、印象が悪くしがちです。

③ 緊張感が高まり、機器操作への不慣れが応募者のパフォーマンスを阻害します。2022年の調査ですが「マイナビ学生就職モニター調査」によれば、45.4%の学生が録画面接に苦手意識を持っています。録画面接というだけで忌避される可能性があります。

④ 録画面接では特に、AI解析時のアルゴリズムバイアスやデータ管理問題がリスク要因となります。

以上のことから、対面時に比べ情報が制限され人物の本質を見極めにくい、トラブル要素が多いことなどから、重要な判断には対面による面接が必須と考えたほうがよいでしょう。

◆そもそも採用の基準は大丈夫?

しかし、こうした技術的なこと以前に、自社での採用の基準や職場・職務の状況を意識した質問事項がしっかりと作成されており、加えてそれらを面接担当者全員が共通認識として共有できていることは、自社にマッチした人材を採用するための大前提です。採用の精度を上げるためにはソフト面からの見直しも必要です。

違法の可能性も…自爆営業に要注意!

◆自爆営業とは?

自爆営業とは、従業員が会社の売上目標やノルマを達成するために、自腹で自社の商品を購入する行為を指します。例えば、郵便局員が年賀はがきを自腹で購入するケースや、コンビニの従業員が売れ残った商品を買い取るケースが典型的です。従業員の経済的損失や精神的苦痛につながるものとして、近年問題視されています。

企業が従業員に対して売上目標やノルマを設定すること自体は違法ではありません。しかし、その達成方法や強要の度合いによっては、民法や労働関係法令上の様々な問題が生じ得ます。

◆問題となる事例

厚生労働省もこうした自爆営業等を念頭に、注意を呼びかけるリーフレット「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点」を公表しています。ここでは、問題となる事例として以下が挙げられています。

・使用者としての立場を利用して、労働者に不要な商品を購入させた

・労働者に対して自社商品の購入を求めたが、労働者がこれを断ったため、懲戒処分や解雇を行った

 ほかにも、注意が必要なケースとして以下が挙げられています。

・従業員ごとに売上高のノルマを設定しており、ノルマ未達成の場合には人事上の不利益取扱いを受けることを明示していたところ、ノルマ達成のため、労働者自身の判断で商品を購入した

・現実的に達成困難なノルマを設定し、ノルマ未達成の場合には人事上の不利益処分を行うこととしている

 自爆営業は従業員に大きな負担を強いる行為です。行き過ぎたペナルティや買取り強要が生じないよう、周知・管理の徹底に努めましょう。

【厚生労働省「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点」】

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001462034.pdf


さきがけ社会保険労務士事務所

南予、宇和島の社会保険労務士です。