さきがけ社労士事務所労務ニュース2023年9月号
令和5年度最低賃金額
愛媛県は10月から897円になる見通し
全国平均は1000円超!
◆目安はAランク41円、Bランク40円、Cランク39円
7月28日、中央最低賃金審議会で令和5年度の地域別最低賃金額改定の目安の答申が取りまとめられ、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円に決定しました。引上げ額はこれまでで最も大きく、全国平均で時給1,002円と、初めて1,000円を超えました。
これを受けて全国の地方最低賃金審議会で議論が始まり、8月7日には東京都では41円引き上げて1,113円、また秋田県では過去最高の上げ幅となる44円引き上げて897円とするよう答申した、と報じられています。
◆引上げ額の目安が4.3%を基準として検討された理由
政府の方針や賃金、通常の事業の賃金支払能力、労働者の生計費を総合的に勘案して4.3%が基準とされましたが、目安の議論を行ってきた公益委員見解では、消費者物価の上昇が続いていることや、昨年 10 月から今年6月までの消費者物価指数の対前年同期比は 4.3%と、昨年度の全国加重平均の最低賃金の引上げ率(3.3%)を上回る高い伸び率であったこともあり、特に労働者の生計費を重視した目安額としたとされています。また、この目安額が中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものであると言わざるを得ない、ともしています。
◆厚生労働大臣が中小企業・小規模事業者に対する支援策に言及
中央最低賃金審議会の答申において要望のあった、業務改善助成金の対象事業場拡大等について、加藤厚生労働大臣は8月8日の記者会見において、できるだけ早期に行うよう検討を進め、検討内容を踏まえて後日発表したいと表明しています。
【厚生労働省「令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34458.html
令和4年度労基署の監督指導結果&指導事例
厚生労働省より、令和4年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労基署が実施した監督指導の結果が公表されました。この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象に行われたものです。指導事例等も公表されているので、概要を紹介します。
◆監督指導結果のポイント
(1) 対象期間:令和4年4月~令和5年3月
(2) 対象事業場:33,218件
(3) 主な違反内容((2)のうち、法令違反があり是正勧告書が出された事例):
1 違法な時間外労働があった:14,147事業場(42.6%)
2 賃金不払残業があった:3,006事業場(9.0%)
3 過重労働による健康障害防止措置が未実施:8,852事業場(26.6%)
◆指導事例のポイント
違反内容で4割超を占め、違法な時間外労働が行われていたとして、労基署が行った主な指導事例を紹介します。
◇長時間にわたる違法な時間外・休日労働を行わせたこと
・36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたことについて是正勧告
・労基法に定められた上限時間を超えて時間外・休日労働を行わせたことについて是正勧告
・時間外・休日労働時間を1か月当たり80時間以内とするための具体的方策を検討・実施するよう指導
◇時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者に対し、時間外・休日労働の情報を提供しなかったこと
・時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者に対し、かかる時間外・休日労働時間に関する情報を通知していなかったことについて是正勧告
◇休日労働に対する割増賃金を支払っていないこと
・休日労働について3割5分以上の割増賃金を支払っていないことについて是正勧告
◇衛生委員会における調査審議等がされていなかったこと
・衛生委員会において、長時間労働による労働者の健康障害防止を図るための対策の樹立に関することについて調査審議されていなかったことについて是正勧告
・1か月当たり80時間を超えて時間外・休日労働を行わせた労働者に対する医師による面接指導の制度を導入していなかったことについて指導
◇深夜業に従事する労働者に対する健康診断を実施していなかったこと
・深夜業に従事する労働者に対し6か月以内ごとに1回、健康診断を実施するよう是正勧告
【厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000969975.pdf
男性の育休取得率の増加と企業の育児休業支援
◆改正育児・介護休業法と男性育休
育児・介護休業法の改正により、令和4年10月から「産後パパ育休」(出生時育児休業)や「育児休業の分割取得」が施行されています。本改正は男女とも仕事と育児を両立できるよう設けられたもので、特になかなか進んでいなかった男性の育児休業の取得については、その対応が求められているところです。
◆男性の育休取得者の割合は約17%
厚生労働省が公表した「令和4年度雇用均等基本調査」によれば、令和2年10月1日から令和3年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、令和4年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む)の割合は17.13%となっています。
この数値は上記改正施行前の状況によるものですが、前回調査(令和3年度:13.97%)より約3ポイントの上昇、過去最高となっています。同調査の10年前の数値が2%程度だったことを考えると、近年、急上昇しているといえます。
◆求められる育休支援の取組み
政府は6月に策定された「こども未来戦略方針」で、2025年までに男性育休取得率を50%へ引き上げる方針を示しました。同方針では、その他、男性が一定期間以上の「産後パパ育休」を取得した場合の給付率の引上げや、育児休業を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置の拡充なども挙げられています。
近時、男性でも育児休業が取りやすい環境かどうかは、求職者の企業選びにおいても判断材料となってきています。企業への助成の動きも注視つつ、今後より一層、育児休業支援の取組みについて検討していきたいところです。
【厚生労働省「令和4年度「令和4年度雇用均等基本調査」の結果概要」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/07.pdf
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